呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
屋敷の外廊下をハリーと一緒に歩きながら辺りを見渡してみるが相変わらず人気はなく、しんと静まり返っている。
エオノラは世間話も兼ねてそのことについてハリーに質問をした。
「ハリー様、ここには侯爵様以外誰もいらっしゃらないんですか……?」
「お察しの通りさ。ここにはクリス以外誰も住んでいない。彼は呪われていて醜い顔をしている。その上、噂によると一目見れば死んでしまうらしいからね」
不愉快そうにハリーは顔を顰めた。その話を聞いて改めてクリスが呪われていて、他人の目には醜い姿で映っているのだと実感する。
(呪いで死んでしまうことはないにしても侯爵様の姿を見てハリー様は平気なのかしら?)
先程からハリーはクリスの姿を見てもちっとも動揺しておらず、堂々と振る舞っている。彼もまたエオノラと同じようにクリスの本当の姿が見えているのだろうか。
エオノラの中で疑問が湧いてくる。それはハリーも同じだったようだ。
「君はクリスの姿を見ても平気そうだけど。怖いとは思わないのかい? 俺はもう見慣れてるから何とも思わないけど、普通の令嬢なら絶叫して失神すると思うんだけどな」
「ええっと……」
どうやら、ハリーはクリスの本当の姿が見えているわけではないようだ。そして、彼は普通に振る舞っているエオノラを不思議に思っている。
エオノラはなんと説明すれば良いのか分からず、言葉を詰まらせた。
(素直に本当の姿が見えるって話せば、今度こそ魔術師の可能性を指摘されるわ。そうしたら魔術院へ連れて行かれるかもしれない……)
どうやって切り抜けようか考えあぐねいていると、ハリーが話を続けた。