呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
第12話
若い頃に右足に怪我を負ってしまったせいで杖が必要ではあったが、それ以外は健康でいつだって溌剌としていた。好奇心旺盛で、誰もがその足では無理だろうと思うことを簡単にやってのけるような人だった。
そんな行動力のある祖母に病気が見つかった。本人は大丈夫だと言っていが身体は瞬く間に悪化してベッドから起き上がれなくなり、そのまま帰らぬ人となった。
一緒には暮らしていなかったので、死に目に会えなかったことが未だに心残りだ。
(薬のお陰で症状の進行を抑えられるのは良いけど、侯爵様の両親は心配しているはずだわ。……本人は呪いを気にして会わないようにしているみたいだけど)
まだクリスとは数回しか会っていないので彼の考えることは分からない。しかし、ハリーの話を聞けば聞くほど、クリスは自分よりも他人を大切にする人だいう印象が強くなっていく。
「冷めないうちに飲むと良い」
いつの間にか目の前にはお茶の入ったカップが置かれている。
我に返ったエオノラはお礼を言って椅子に座ると淹れたてのお茶を口にした。
ハリーは自分のカップにもお茶を注ぐと早速口を付ける。
「……エオノラ嬢、折り入って一つ頼みたいことがある」
「頼み、ですか? それは私にできることでしょうか?」
「これは君にしかできない。正直なところクリスの身体が薬に慣れてきてこのところ効き目が良くないんだ。そのせいで体調の悪い日が多い。そこで、君にクリスやクゥの世話を私の仕事が落ち着く夏頃まで手伝ってもらいたい」
「えっ? どうして私に?」