呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
ハリーは肩を竦めると宥めるような声で言う。
「クゥ、俺は魔……仕事でここに来られる余裕がなくなっている。誰かには面倒見てもらわないといけない。彼女はクリスの顔を見ても卒倒しなかった。肝だって充分据わっているし、仮にクリスの病が悪化しても彼女が俺に連絡してくれる。ルビーローズのことが心配なら、尚のこと彼女を側に置いておいた方が都合が良い。こんなか弱い令嬢が一人で屋敷に乗り込んで盗める訳がない」
クゥはハリーの説得に尚も首を横に振った。
エオノラはハリーの話を聞いて思案顔になった。
このままではクリスやクゥが何か危機的な状況に陥ってしまった場合、誰も助けに来てくれない。これまではハリーが定期的に様子を見に来てくれていたようだが、話を聞く限りそうもいかなくなる。
(侯爵様もクゥも、それからルビーローズも放っておけないわ)
エオノラは椅子から立ち上がると、クゥの目の前まで移動してしゃがみ込んだ。