呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


「クゥ。あなたが番犬として働き者であることは充分知っているわ。ルビーローズに手を出さないことは約束するからここに来ることを許して? 私、クゥも侯爵様のことも心配なの。だからどうか、お願い」
 そこでハリーが言葉をつけ加える。
「エオノラ嬢にはルビーローズには触らないという条件に加えて、屋敷の中には入れないという条件もきちんと付ける。それでどうだ?」
 クゥはハリーを睨むと鼻面に皺を作った。納得していないらしい。

 すると、ハリーがエオノラに問いかける。
「エオノラ嬢、君にこんなことを尋ねるのは失礼かもしれないが料理はできるか?」
 通常、料理というのは料理人の仕事なので一介の令嬢がするものではない。だが、エオノラはリックに手料理を食べたいとせがまれて料理人から少しだけ料理を習っていた。
「簡単なものであれば少しだけ……」
「へえ、それは良い。なんてったってもうまずい保存食の日々を過ごさなくて済むんだから。野菜の酢漬けや魚の塩漬けなんかとは無縁になるぞ」
 その言葉を聞いたクゥはまだ腑に落ちない素振りをみせたが、ハリーの粘り強い説得に根負けして最後は尻尾を揺らして了承してくれた。

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