呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
第13話
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庭園の四阿でお茶を飲んだ後、ハリーとクゥはエオノラを正門で見送った。馬車に乗るよう勧めたが断られてしまったので彼女の姿が見えなくなるまで見守ることにした。
それから庭園の四阿に戻ると、ハリーは椅子に座って残りのお茶を飲み始める。と、先程までエオノラが座っていた椅子に、クゥがひょいっと飛び乗った。
「茶が飲みたいのか?」
尋ねると、クゥは半眼でじっとハリーを見つめた。
「ハリーは一体何を考えているんです? ここには大事なルビーローズがあるんですよ!」
クゥは人間の言葉でハリーを非難した。
通常の人間なら狼が人の言葉を喋ることに驚くが、ハリーは涼しい顔をしてラム酒入りのケーキを頬張っている。
「そう怒るな」
「怒っていません」
「嘘つけ。怒ったり苛ついたりするといつも口調が丁寧になるくせに」
ハリーがにやりと白い歯を見せると、クゥはぐうっと唸った。
「これでも俺は君のためを思って行動したぞ」
「私のため?」
クゥは三角の耳をピクリと動かし聞き咎めた。