呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
初めて呪いが発動して狼になった時は、先代侯爵が亡くなった次の満月だった。
月日を重ねるごとに満月とは関係なく、人間の姿から狼の姿になる時間の方が長くなっていった。
呪いが進めば、いつか完全な狼となって人間には戻れなくなってしまう。
歴代侯爵たちは皆、狼化が進んで戻れなくなって死んでいった。戻れなくなった後はルビーローズの世話をして守ることだけに命を捧げた。
この呪いを解くためにも、鍵となっているルビーローズの花を咲かせなくてはいけない。花を咲かすことができれば、代々続くラヴァループス侯爵の呪いは完全に解ける。
クリスが侯爵となって初めてこの屋敷を訪れた時、ルビーローズは枯れてしまいそうな状態だった。
クリスはバラの研究に没頭し、ルビーローズが蕾をつけるところまで成果を上げた。しかし、それ以降の成長はなく手詰まりになってしまっている。
国中、時には周辺諸国から取り寄せた様々な書物を読み漁ったが、有力な情報が書かれたものは見つからなかった。
「どこにも文献がないのは、それこそ稀少な品種だから仕方がないのかもしれない。でも一つくらいはあってもいいはずなのに、有力な情報ちっとも見つからない。どうやったら蕾は開くんだ。呪いを解くためにはルビーローズの花が必要不可欠なのに」
クリスは額に手をつけてから、前髪をくしゃりと掴んだ。