呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
取り出してみると、それはローズウッドの素材にエンジェルリーフの金細工が施された美しい逸品だった。
(これって宝石箱かしら? 蓋は……開かないわ)
宝石箱は中身が入っているような重量感はなく、軽く振ってみるとカタカタと音がした。
ためつすがめつしていると、ジョンが懐かしそうに目を細める。
「懐かしいですな。そちらは大奥様がお嬢様のお誕生日にプレゼントされた宝石箱です」
「だけどジョン、この宝石箱は開かないの」
蓋に力を込めて引っ張るがびくともしない。どうやら鍵が掛かっているらしい。
「装飾で目立たなくなっておりますが、ここに鍵穴があるようです」
ジョンが葉っぱを指さすのでエオノラは葉っぱに触れてみる。すると、確かにカタカタと揺れた。それはスライド式になっていて、指の腹で横にずらせば鍵穴が現れる。
「本当だわ。だけど鍵穴にしてはとっても不思議な形状をしているわね。この鍵はどこにあるのかしら?」
「恐らく、箱の中に一緒にしまっていたと思いますけど。……やや、どこにも見当たりませんね」
エオノラはジョンと一緒に宝石箱が入っていた箱の中をくまなく探したが、それらしきものは見当たらなかった。仕方がないので宝石箱を開けるのは諦めて、手がかりになりそうなものとそうでないものを精査する。
「鍵がないのは残念です。宝石箱はいかがなさいますか?」
尋ねられてエオノラはどうするか悩んだ。