呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 緑色のフリルとリボンがアクセントの若草色のドレスに着替え、朝食を済ませたエオノラは居間のソファで寛ぎながら祖母からの手紙を読んでいた。
 一番古い手紙を読み始めると、自分ですら忘れていた懐かしい内容が書かれていた。あの頃は毎日が楽しくて幸せだった、とエオノラは心の中で思う。
 まだ両親もこの屋敷にいて一緒に毎日を過ごしていたし、夏になると祖母が遊びにきてくれていた。足が悪かった祖母はエオノラが座っているソファに腰掛けていろいろな話を面白おかしく話してくれた。

 思い出に浸りながら次の手紙を手にしてみると、それが最後の一通だった。封筒の宛先には父の名前ではなく、エオノラの名前が書かれている。
 中の二つ折りにされている便箋を開くと、最初にあったのは『十歳のお誕生日おめでとう』という言葉だった。その一文を読んだ途端、当時の記憶が蘇る。

 この年は初めて石の音が聞こえるようになった年だった。知らせを聞いた祖母はまだ夏前だというのに屋敷に駆けつけてエオノラの力について父と話していたことを覚えている。
「……そうだわ。この年はお祖母様が誕生日に特別な贈り物をしてくださったのよ。それがこの宝石箱だった」
 エオノラはテーブルの上に置いている宝石箱を見つめた。

 長年眠っていたそれは手入れがされていなかったせいで鈍く光っているが重厚な印象をこちらに与える。
 エオノラは再び視線を便箋に戻した。

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