呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
第4章 消えない記憶

第18話



 エオノラは今日もクリスがいる死神屋敷へ向かっていた。
 ジョンやイヴを含む使用人たちには散歩をしていると嘘を吐いて出てきているのであまり長居はできない。滞在時間は二時間程度で、散歩と疑われない時間帯である朝と昼の間に通うことにしている。


 クリスは午前中の新鮮な空気を吸うために庭園の手入れをしていることが多かった。彼が庭園の手入れをしている間にエオノラがガーデンハウスで軽食やお茶の準備をする。料理人のような手の凝った料理はできないが、簡単な家庭料理は教わっていたので出してみた。初めてクリスのために作った料理はかぶと羊肉のシチュー。
 エオノラはクリスがどんな反応をするのかドキドキしていた。

 以前、リックに甘い物が食べたいとせがまれて差し入れにオレンジケーキを焼いて持っていったことがある。数日間屋敷の料理人に教えを請い、納得がいくまでお菓子作りに励んだ。
 そして一番できの良い物を持って行くと、彼はこんな()()()()()()は食えないと食べてもいないのに暖炉の薪代わりにしてしまった。喜んでくれることを期待していたのに、あんなことをされた時は悲しくて泣いてしまいそうになった。
 よって、誰かに料理を食べてもらうことは正真正銘これが初めてだ。またリックの時のような反応をされたらと思うと不安が過る。

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