呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
ジョンに祖母が大切にしていたものはないか尋ねると、祖父からもらったアクアマリンのブローチを生涯大切にしていたという。
その遺品をジョンに出してもらい、鍵になるか試してみたが、手にしたアクアマリンはエオノラの親指の爪くらい大きく、真上から見ると正方形のように見えるプリンセスカットに整えられていた。どう考えも鍵の形はしていないし、鍵穴に入る大きさではなかった。
何でも良いから手がかりが欲しかったので、この資料をもらえるのは大変ありがたい。
エオノラは資料を大切に抱き締めると、一旦調理台の上に置いた。
「今度侯爵様にお礼を言わないと。だけどまずは――あなたのご飯を作りましょうね」
ご飯の提案をするとクゥが嬉しそうに口を開いて笑顔になる。
つられたエオノラもにっこりと笑みを浮かべてクゥの頭を一撫ですると、服の袖をまくった。
「そういえば……侯爵様は、クゥはなんでも食べると仰っていたけど、狼って本当になんでも食べられるの? 犬みたいにレーズンや玉ねぎが駄目、とかないのかしら?」
まな板と包丁を用意したところで、不意に疑問が湧いた。
これまではクゥのご飯を用意する際はクリスからの指示が必ずあった。内容としてはチーズを載せたパンや玉子のサンドイッチなど。
改めて考えてみると、狼が食べるには不思議に思う料理ばかりだ。
頬に手を当てて物思いに耽っているとクゥが一吠えする。
お腹が空いているのでなんでもいいから早く食べたいようだ。
「分かったわ。すぐ食べられるようオムレツを作りましょうね」
人差し指を立てて提案するとクゥが尻尾を元気よく左右に振り、きらきらと目を輝かせた。
「ならばベーコンはカリカリに。パンにはチーズを載せて火で炙ってくれないか?」
「分かったわ。リクエストに応えてそうしましょ……え?」
入り口の方から聞き覚えのある声がして、振り返るとそこにはハリーが立っていた。