呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 その言葉を受けてアーサー王は、狼神の番を見つければ厄災は降りかからないと考え、相手となる狼を探した。しかし、どんなに手を尽くしても狼神の相手は見つからなかった。
 番が見つからないまま時が過ぎてアーサー王の息子の治世になった時、事件は起きた。狼神が言っていた厄災の呪いが王子に現れてしまったのだ。それは王子の顔を醜悪なものに変え、素顔を見た相手は死んでしまうという恐ろしい呪いだった。

 当時は王子が一人しかおらず、このままでは王家存続が危ぶまれた。アーサー王が嘆き途方に暮れていると、事情を知った家臣の一人が天に祈りを捧げて王子の呪いを自身の身に移した。その勇気と忠誠心を称えられ、家臣にはラヴァループス侯爵位が与えられた。それ以降、彼の子孫は代々呪われ続けている。
 今から数百年も前の話だが、これはエスラワン王国の国民なら誰もが知る話だ。


「侯爵家の人間は誰か一人が呪われていて、その人が死ぬと次の人間に呪いが移る。呪われた人間は侯爵位を継ぎ、死神屋敷で死ぬまで暮らす。呪いに掛からないためにも絶対に死神屋敷に近づいてはいけない……」
 くだんの屋敷がフォーサイス家の近所にあるため、エオノラは幼い頃から兄と共に両親からこんこんと言い聞かされていた。
(ぼうっとしすぎてこんなところまで来てしまったのね。早く屋敷に戻らないと)

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