呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 エオノラが否定しようと口を開き掛けるがその前にハリーが言った。

「今度は俺が質問したい。エオノラから見たクリスはどんな人間だ? やはり捻くれ者か?」
 エオノラは少し考え込む。
「そう、ですね……クリス様は素っ気ない態度を取る方です。言葉遣いも決して優しくはありません。でもそれは呪われていて、他人に迷惑を掛けたくなかったり、傷つけたくなかったりと、いろんな葛藤があってああいう態度になっているんだと思います。本当はとっても優しい人だって、知っていますから」
 本当に優しくなければ、傷の手当てなんてしてくれないし、魔術師が作った宝石箱に関する資料を探してはくれない。
 率直な考えを述べるとハリーは「ほう」と感心したように呟く。
「クリスのことをよく観察していないとそこまではっきり言えない。きっと聞いた本人は嬉しいだろうな」
 ハリーはにんまりと笑ってから改めて真面目な顔つきになった。

「エオノラはクリスを見ても恐れない。そんな人が一人いるだけでもクリスにとっては心強い存在になる。……呪いのせいでクリスはたくさんのものを失い、ルビーローズだけが心の拠り所だからな」
 話に耳を傾けていたエオノラは首を傾げた。
 ルビーローズだけが心の拠り所というのはどういうことだろう。
 確かにルビーローズは世にも珍しい貴重な品種だが、この庭園にはスイートブライヤーやコウシンバラ、ダマスクローズなど多種多様なバラがそこここに植わり、彼の手によって大切に育てられている。
 いうならばこの庭園すべてがクリスにとって心の拠り所ではないのだろうか。

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