スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
ゆっくりと王都の景色が眺められると思っていたのに、背中から感じるレイの温もりのせいで落ち着いて景色なんか見てられなかった。
「本当にもう……心臓に悪い」
独りごちる私の声は風を切って進むレイには、まるで届かないのだろうけど。
自分の心を落ち着かせる方法をあれやこれやと試しているうちに、いつの間にか目的地に辿り着いたのか馬が止まった。
辿り着いた場所は、立派なお城を中心とする大きな王都の全貌を見渡せる、拓けた土地。
綺麗に区画分けされた畑がズラリと並ぶ、広大な土地を見渡していると、レイが私を横抱きにして馬から下ろしてくれた。
私達の到着に気がついたのは、ここで生活している農民達だった。
「おおー!国王様ー!早いお着きでー!」
ふとその声を聞いたレイが、纏う空気を変えた気がした。
横を見れば、普段と変わらないレイの顔がそこにあった。
「久しいな、スンド。皆も元気そうで何よりだ」
「国王様が来るって日を、みーんなして心待ちにしてたんですだ」
スンドと呼ばれたお爺さんは、レイを見ても怯えた表情も何もなく優しい笑顔で迎え入れてくれていた。