スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
しばらくは仕事漬けにされる覚悟で、レイも抜け出してきたみたいで、カイルさんの名前を出して僅かに表情が強ばったのを見逃さなかった。
……なんだ、レイも怖いんじゃない。
ここまで連れてこられたお陰で私は共犯者になってしまったので、私もきっと怒られるんだろうなあ。
「よし。これでどうだ?」
たくさん試行錯誤してきた結果である、魔法式が書かれたノートと、魔法陣を見つめ直して最終確認をするレイに、シュマがゴーサインを出した。
「では……いくぞ!」
気合い十分のレイの声に、私はいそいそと岩の後ろへと逃げ込んだ。
魔法陣が光輝き、描かれた文字が綺麗に浮かび上がり――そして。
「きゃっ!!」
身を隠すのに丁度良かった岩が、ゴゴゴ……と上下左右に動き出した。
どうしていいのか分からず後ずさる私を、横からぎゅっと抱きしめられた後、衝撃に備えて目を閉じた。
ただ思っていた程の衝撃はやって来なくて、優しい温もりが私を包んでいただけだった。
「……?」
恐る恐る目を開けて周囲を確認すると、辺り一面が雲に覆われたかのように薄暗い。
ただ怪我がなかったことにほっと胸を撫で下ろしていると、上から声が降ってきた。