スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
気分転換という名の強制参加
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街の中心に佇む屋敷の前で、私はいつものように豪奢な扉を遠慮なしに叩いた。
中から顔を出した見慣れた友人の顔は、私の来訪に少しだけ驚きを浮かべていた。
「こんにちは、セドリック。お届け物よ」
「やあ、ルフィア。今日は君が配達しに来てくれたのかい?」
目を惹く綺麗な黄金色の髪と、アクアマリンの宝石のように輝く瞳の持ち主の彼は、外見からしても誰もを魅了する。
若手貿易商、セドリック・スイゼン。
その名だけを聞いても、顔を赤らめる女性は数多い。
おおらかで優しい性格、知識もあって、ユーモアもある。
外見内面共にパーフェクトなセドリックは、友人としては尊敬できる相手ではあるけれど、その一方で女性関係の噂は絶えない、言わば魔性の男。
甘い言葉を囁き、花を愛でるように慈しみ、一時の淡い恋を楽しむのが、セドリックの信念らしい。
ただセドリックはこの街で生活しているわけではなく、ふらりとこの街にやって来て屋敷で何日か滞在しては、何処かへまたふらりと行ってしまう謎の多い人物でもある。
貿易商ともなると、色んな場所に転々とするのも分からなくはないけれど、彼の自由さには到底ついていけない。
「師匠が忙しいからって頼まれてきたの」
「ありがとう。今夜もまた素敵な夜が送れそうだよ」
意味が深そうな言葉を言い放ったセドリックに反応することなく、私は小包を手渡す。
師匠にも敢えて聞かないけど、この小包の中に入ってる薬は一体なんなのか……いや、考えないでおこう。
代金を持ってくるからと中へ入るように促され、店がの空間がすっぽり入ってしまう広さの客間へと案内された。
相変わらず無駄に広い部屋……。
綺麗に手入れされた部屋は清潔感と高級感が溢れた、おとぎ話にでも出てきそうな部屋。