スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
「かっわい〜!」
「可愛くなどない。成長するにつれてそいつはただの獣になるだけだ」
「でも、あなたも怪我を治してくれたレイに感謝しなきゃダメよ?」
顔を覗いて言い聞かせてはみるが、レイに対してまるで興味を示さない。
私には何故かこんなに懐いてくれるのに……レイが怖い顔を向けるから怯えちゃったのかな。
重たい溜め息を零すレイに、カイルさんが一つ咳払いをして自分に注目を集めさせた。
「単刀直入に言いますと、敵国シェルバムのフィール王子が失踪しました」
「この期に及んで血迷ったか」
「それが我がセリオリア国側が王子を誘拐したと決めつけて、近々使者を送ってくるそうです」
「その使者の中に偽の王子を紛れ込ませ、その偽物をこの国に残した上で我々が王子を殺したかのように見せかける暗殺を企てる。他国の王子を殺したとなると、我々の同盟国も黙って見過ごすわけにはいかないと加担させる方向に持っていく、そんな戦法だろう」
つまらないとでも言いたげなレイは嘲笑うように口角を上げた。
「自国の誰の命を犠牲にしてまでも我が国が欲しいか。どこまで強欲な奴らだ」
「セリオリアは貿易の中枢を担う国。経済も発展していれば、自然豊かで気候も安定しているだけあって、自国だけでも食料の生産が追いつく国。指を加えて物欲しそうに見られても当然でしょう」
「自分の国を豊かにする方法は考えず、他人の庭を奪略する戦法を取る国王か……手に余るな」
いつにも増してレイの酷く冷たい目には、怒りが宿っていた。