スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
「なんかね、私すっごく幸せな気持ちなの。何でかな」
「ガーウ」
「そうだ、キミにも名前付けてあげなきゃね」
中庭へと続く廊下の片隅で私は足を止めて、白虎の元へとやってくるかのように額に着いた瞳と同じ色の花びらを見て、その名前を呼んだ。
「ハイネ。貴方の名前は今日からハイネよ」
淡い空色の綺麗な花は、中庭を埋め尽くすように咲き誇っていた。
ハイネスカイローズ。
この花の花言葉は、幸せの音色。
きっと大変な想いをしてあの森で一人戦ってきたこの子には、たくさんの幸せが訪れるはずだから。
「ハイネ。どうぞよろしくね」
花びらを取ってあげながら、吹き抜けてきた風にその花びらを手放した。
……どうかこの子の幸せと、この国のみんなの幸せの音色が響きますように。
もうこの子に怖い想いも辛い想いもさせないと胸に誓いながら、私はユツィー達が待つ自分の部屋へと足を動かした。