スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜


 馴染みのない部屋をぐるっと見渡していると、使用人の一人が私に紅茶と茶菓子を出してくれて、セドリックがやって来るまで、きっと高級であろう紅茶を堪能する事にした。

 質のいいソファーに腰を掛けて、香りを楽しんでからそっとカップに口付ける。

 思わずため息が零れるほどの上品な紅茶の滑らかな味に、口元が緩む。

 廊下を軽い足取りで歩く足音が近づいてきて、セドリックが部屋の中に入ってきた。


「待たせたね」


「全然。寧ろ荷物届けに来ただけなのに、気を遣わせちゃってごめん」


「そんな事ないよ。本当はタイミングを見計らって、今日僕から会いに行こうとしていたんだ」


 少し前はセドリックから店にやって来ることが多かったけど、仕事が忙しいせいで顔を出しに来ることが出来なくなったらしい。

 その仕事の中に、何割程度女性絡みが含まれてるのかは、聞くことでもないから聞かないけれど。


「それにしても相変わらず、ルフィアの髪は綺麗だね。君を見ているだけで、紅茶が更に美味しいく感じるよ」


「私の髪のお陰じゃなくて、そもそもの紅茶が美味しいのよ」


 喉を潤した高級な紅茶の入ったカップを持ち上げて、ド正論を述べたつもりだったけど、セドリックはそんなことないと首を横に静かに振る。


「安心する人と時間を共に過ごすだけで、心は穏やかになり、その上食事は旨味を増すものなんだよ」


「ふーん……」


「本当に君は美しいよ、ルフィア」


 上辺だけの言葉じゃない、彼の本当の言葉。

 この街に来たばかりの頃に、まだ常連さん達からも怪しい目を向けられている中、セドリックだけは純粋な眼差しで、私の髪を綺麗だと言ってくれた。

 嘘を並べた口説き言葉でもなんでもない、彼の率直の意見。

 初めて出会ったあの時から、私は自分を受け入れてくれる人に出会えた喜びを知った。

 彼も師匠を目当てに店にやって来るようになったけど、その頃にはもう何も気にせず、仲良くしてくれる友人になった。






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