スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜



 大事な大事な私の友人の言葉に、素直に心が温かくなるのを感じて、自然と口元が綻んだ。


「何だか元気がないように見えたけど、何かあったのかい?」


 色々な女性との関わりで心情を読むのが上手いのかどうなのかは分からないけど、笑顔でやって来ていたはずの私の小さな変化にセドリックは直ぐに気づいた。

 本当にすごいな、この人を欺く事なんか出来っ子ないか。

 人には言えないエルフの混血であることも知っている彼になら、新しく獲得してしまったスキルの事を話してもいいかと、口を開く。


「ねえ、セドリック」


「なんだい?」


「私のこと、口説いてくれない?」


 事を話す前に一応実験してみたい気持ちが勝った私は、紅茶を一口啜ってから真剣な眼差しで彼を見つめた。

 女性なら誰でもセドリックの魅力に堕ちるのだから、これで私が何も感じなかったらスキルの力は正真正銘本物と言える。

 逆に少しでも狼狽えるような事になれば、スキルの効果はさほど強いものではない。

 そうなれば私にだってトキメキというものが感じられる、今までの私になれるはず。

 期待を込めて、セドリックの甘い言葉を待つけれど、いきなり立ったセドリックは、私の隣にやってくるや否や、至近距離で瞳を覗かれる。


「ルフィア……」


 すぐ目の前で吐息がかかり、セドリックの長い指が私の耳に触れる。

 擽ったさに身じろぐとそのまま、彼の瞳に吸い込まれるように、ゆっくりと顔が近づいてくる。


「ルフィアの優しい笑顔を見ていると、どうしても全てほしくなる」


「っ……」


「可愛い僕のルフィア……」


 名前を呼ばれるだけで、ざわめく身体。

 規則正しく動いていたはずの心臓が、ほんの少しだけ早まる。

 くいっと顎を上げられ、睫毛が触れるギリギリの所まで顔が近づいてくるのに、身体は硬直して動かない――。







< 14 / 237 >

この作品をシェア

pagetop