スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
綺麗……そう褒めてくれる彼に、本当の事を話さなきゃいけない気がした。
ゆっくりと過去の蓋を開けて、私は言葉を紡ぐ。
「今ではもうよく思い出せないけど、本当の髪の色は小麦色だったの」
「だった……?」
「うん。私ね――エルフの血が流れているの」
人間とは異なる血が流れる私は、怪物だとか魔物だとかそういう類だっていう人もいる。
初めて打ち明ける自分の過去に、レイはただ黙って耳を傾けてくれた。
「幼い頃に父は戦争で死んじゃって、母と二人必死に生きてたんだけど、母が急に床に伏せたの。お金もない私は……近づいちゃいけないって言われてた狼が出る森に、一人薬草を探しに森へ入った」
一度死にかけた時のあの時の記憶は、昨日の出来事のように簡単に思い出せる。
鮮烈な記憶は溢れるように蘇ってくる。
「帰り道が分からなくなって、気づいたら夜になってて……案の定狼と出くわして、腹を引き裂かれた。自分の血の匂いを今でも覚えてるくらい、たくさんの血が流れて激痛に蝕まれながら、ああ……私死ぬんだってそう思ったの」
あの時の絶望は、私の生きてきた人生の中で最も重たい味がした。
味わいたくもなかった絶望を、七つの時に味わってしまったのだ。
「そんな時に興味本位で私の前に姿を表したのが、エルフだった。混血となりその生をまっとうしろって、気味の悪い笑みを浮かべながら、抵抗する力もない私に無理矢理その血を飲ませてきた。傷は治ったけど、私は人じゃなくなった。そんな私を――母は捨てた」
「もういいルフィア。ルフィアの全ての過去を俺は受け止める。だから……どうか泣かないでくれ」
言われて自分の瞳から涙が零れ落ちていることに気づき、慌ててレイの胸から逃げ出そうとするけれどそうはさせてくれない。