スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
ただならぬ空気に身体を起こして、何か出来ることはないかと必死に頭を動かした。
……平和を崩してしまう争いが、始まるんだ。
「そんな顔をするな」
頬を包み込むようにレイの優しい手が伸びてきて、優しく撫でる。
これから戦地に向かう人が、こんなにも優しい手をしてるのに……どうして争わなければいけないの?
「俺ももう少しルフィアの寝顔を見ていたかったが、それもここまでのようだ」
「……レイ」
「行ってくる。安心してここで待ってろ」
囁く声は私を安心させるかのように、しっとりとしていて心地のいい声。
くいっと顔を持ち上げられたかと思えば、レイの顔が近づいてきて、額に小さな温もりを落とされる。
何も言えない私は、ただ黙って部屋を出ていく彼を見送ることしか出来なかった。
そして闇夜に溶けていくように――彼の靡く髪が消えていった。