スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
ユツィーもそれを心配して声を掛けてくれるけど、その優しさが切なくなって、今は忙しい城内の手伝いをするように行動してもらっている。
お陰で人と話す機会も減り、昔の自分に戻ったかのような感覚に陥ってしまう。
「そうですか……では俺はここで――って本来なら言われた通り引き下がるのが騎士らしい動きかもしれないけど、そうも言ってられないんですよ」
「え……?」
「そんな顔で陛下をお出迎えするおつもりですか?帰ってくる御方に、安心してもらえるようにまずはその暗い表情を消し去らなきゃ」
半ば強引に腕を取られて廊下を突き進むラジールくんの歩調に合わせて、気がつけば城の外へと出ていた。
久々の部屋以外の場所に、凝り固まっていた何かが僅かに緩む。
木々の間から流れる風の心地いい感覚に、思わず目を閉じた。
「ああ、すごい気持ちのいい風」
「やっーと穏やかな顔に戻りましたね」
「……私、ずっと変だった?」
「これから大きな獲物を狩りをする狩人みたいに、ずっと真剣で張り詰めた緊張感が漂ってましたよ。今もほら、肩に力が入ってる」
言われて肩やら噤んだ口元やらに力が入っていた事に気づき、ゆっくり深呼吸して全身の力を抜く。
「そうそう。ルフィア様にはそれが似合います」
「……心配かけさせちゃってごめん」
「いいえ。俺に出来るのはこれくらいしかないですから」
そう言いながらエスコートしてくれるラジールくんと共に、そのままどんどんと街の方へと進んでいく。