スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
兵士達が挙兵したにも関わらず、忙しない街の人々は不安をよそに一生懸命仕事をこなしていた。
何ら変わらない日常を送るように。
懸命に働く人達の傍ら、街の至る所に目につく鮮やかな手持ちランプを飾る女性や子供達の姿がちらほらと見受けられた。
「あれはなに?」
「陛下や兵士達の帰りを祈るためのランプです。迷わず自分達の国に帰ってこられるよう、ああやって飾りつけるんです。王都では戦う者の帰りを待つ習わしがあるんですよ」
まるでお祭りのように飾り付けられたランプ達は、昼間からその身を灯して皆の願いを光に宿していた。
「大丈夫ですよ。陛下は必ず帰ってきますから」
街の人達の家族の中にも、兵士として戦地に赴いている人もいる。
だけど誰も下を向いていない。
必ず帰ってくることを強く願って、いつもの日常を過ごせるようにこの街の穏やかな時間を守っているんだ。
「陛下のご友人のセドリックさんという方は、いつも怪我一つ負ってこない陛下が、争い事に怪我をして帰ってくるかどうかなんて賭け事してるくらいですからね。そこまで言われてるんですから、陛下の腕は本物ですよ」
「ラジールくん、セドリックを知っているの?」
「ルフィア様もご存知で?」
「ええ。彼は私の友人でもあるから」
ただの貿易商という彼には謎が多くて、友人と名乗っていいのか分からないけど。
どうやら王都でもセドリックの顔は広いらしい。