スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
追い出されるのはきっとこの私で、もう一人大事にしているはずの離宮で過ごしている婚約者を迎え入れる。
私は新しい魔法を作るために必要なスキルを持っている、それだけの田舎娘……ただそれだけだから。
やってくる未来が妙にはっきりと思い浮かんで、思わず身震いをした。
「ルフィア様?大丈夫ですか?」
表情が固まった私の顔を覗くラジールくんに、心配させまいと笑顔を浮かべてみせる。
レイに真実を聞いてもいないことを、今この場で鵜呑みにしてどうする。
帰ってくることを信じているのに、彼の事は信じられなくなってしまったら本当に帰ってこない気がする。
それだけは絶対に嫌だ。
帰ってきたらレイの口から本当の事を聞けばそれでいい。
それに私は最初からこの生活から離れる身なんだから、傷つく理由はどこにもない。
分かっていた別れの時間がもう少しでやってくるだけだから。
だから――。
「大丈夫よ」
自分にもそう言い聞かせるように、返事を返すとラジールくんは何か言いかけたけど言葉を紡ぐことはなかった。