スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
街の人達は道の端で横に列を作って、出迎えの準備を整えていく。
そうこうしているとこちらへと歩いてやってくる、兵士達の姿が遠巻きに見え始めた。
先頭を馬で歩くのは騎士団長のユートさんとシエンさんで、その後ろを兵士達が列を成して街へと戻ってきた。
「ユートさん!シエンさんっ!!」
彼らの姿を見つけたラジールさんは、混み上がってくる感情を抑えきれずに、彼らの名前を呼んだ。
疲れきっているのか、周りの声にかき消されて届かなかったのか、二人はラジールくんの声には反応せずに城へと続く道を進んでいく。
二人の無事を確認できたラジールくんはほっと胸を撫で下ろしているけれど、私はまだ胸を撫で下ろすことが出来ずにいた。
居ない……レイが見当たらない。
街の人達の高い壁に阻まれて、しっかりと探すことが出来ない。
背伸びをして懸命にレイの姿を探していたけれど、そんなことをせずとも、すぐに彼の気配が本能が察知した。
「ッ……!」
そこにただ居るだけで、全ての生き物を切り裂くかのような鋭く威圧的な空気を纏った彼がいた。