スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
誰もが呼吸すらも許されまいと身を硬直させて、顔を強ばらせている。
空気が凍りついていき、帰還した兵士達へ向けられた温かい想いは一瞬に熱を失っていく。
知らない赤に染め上げた甲冑を身につけたレイは、光が宿っていないその瞳にただ帰る道を映し出しては、真っ直ぐに歩いていた。
……誰も近寄ることを許さない、冷酷非道の国王様がそこにいた。
「レイ……!」
駆け寄ってその赤は誰のものなのか確認したいのに、隣にいるラジールくんがそうはさせまいと、私の腕を掴んだ。
多分、ラジールくんもレイに怯えて反射的に私の行く手を阻んだんだろう。
だけど、私はその手を振りほどいて人の波を掻き分けてレイの元へと駆け寄った。
「レイ!怪我は?!」
誰も彼の事に気にかけたりできない。
一匹狼のように孤独を掴み取ってしまった彼の手を取ることができない。