スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
「今マスターが帰ってきて、新しい魔法が上手く使えたと報告がありました。ちゃんと完成した形で発動が出来たそうですよ。ただ、少々お疲れのようで無愛想に磨きが掛かっていましたけど」
「そう……魔法完成したんだね」
「はい。これもルフィア様のお陰です!」
ああ……そっか。
私の役目が今回の戦いで成果を成して、終わりを迎えたんだ。
魔法が完成したら婚約は解消されるんだから、先程のレイの反応も無理もない。
これまでのように私に優しくする義理はないんだもの。
何かが崩れていく音がして、もう自分を保っていられる自信がなかった。
「ラジールくん護衛ありがとう。ユツィーももう今日は一人で居たいから……じゃあ」
二人の反応を待つことなく脇目も振らずに、その場から駆け出した。
どこに行っても私の居場所はないけれど、二人の前でいつもの私でいられない気がした。
せっかく仲良くなれたと思っていたのに、自分のせいで関係を台無しにはしたくなかった。
熱くなってきた目頭をどうにか抑えて、月明かりだけを頼りに城の奥へと足を動かしていく。
「……やっぱり私って、愛されることはないのかな」
ふいな疑問を独りごちるけれど、誰も答えてはくれない。
誰かに一途に愛されたい……その願いは叶わない。
なんでこんなにも切ないのか、よく分からない。
ただ辛い感情が私の心を蝕んでいって、ズタズタに引き裂かれていくのをただじっと我慢する事で精一杯だ。
今にも零れそうになる涙を拭って、人の気配のない城の奥へと進むことしか出来なかった。