スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜



 夜風に当たったお陰なのか、周りを見て回れる程に落ち着いて来たみたいだ。

 子供のように思い通りにならなくて、感情が爆発して……少し恥ずかしい。

 ユツィーもラジールくんも優しく接してくれていたのに、私はそれに応えられなかった。

 応えたくても気持ちの余裕がなくなる程に、いつの間にか私の中でのレイの存在が大きくなりすぎていたんだと、今更気づく。


「相手はこの国の王様で釣り合うはずも、届くこともしない存在なのに……なんで、よりにもよってレイなんだろう」


 自問自答をしてはみるけれど、自分が壊れるくらいに彼の事を想っていて、誰よりも慕っていた……それが答えだ。

 彼の持つ魅力に、私は虜になってしまっていたんだ。

 物語のように甘くとろけてしまいそうな言葉や、落ち着くポカポカと太陽のような温かさを秘めた仕草や行動全てが私を魅了しては逃さない。

 憧れていたこの気持ちの答えは、言葉にしてはいけないと分かっていても零れてしまう。


「私……レイのことが、好き。好きで好きでたまらないっ……」


 止められないこの気持ちを抑えようものなら、衝動のままレイの元へと向かってしまいそうで我慢出来ずに言葉を吐き出してしまった。

 止められないこの想いだけど……彼が先程私に向けた視線で、全てが分かってしまった。



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