スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
「それでカイルさん。どうかされました?」
「お忙しいかとは思いますが、一段落着いたら一緒に城に戻ってくれませんか?」
「はい、大丈夫です。香り袋も残り僅かなので、追加の香り袋も持って来ようかなと思っていた所なので」
「それは丁度良かったです。では行きましょうか」
ハイネとの別れに惜しむ子供達には申し訳ないけれど、また来るねと別れを告げてカイルさんの後を追うようにハイネと一緒に城へと戻る。
ハイネには一度部屋で休んでいるように伝えるけれど、どうしても離れたくないのか私の傍から動こうとはしない。
カイルさんが向かおうとしている場所を察知して、私を心配してくれているのかもしれない。
「どうぞ中へ」
カイルさんが扉を開けて待つのは、レイの執務室。
感情に区切りが着いたとは言え、失恋してから好きだった人に会う時にどう接するなんて恋愛小説でも読んだ事がなくて、戸惑う心が揺れる。
「ガウ」
「ありがとう、ハイネ。大丈夫よ。私はもう……昔みたいに弱くはないから」
ハイネのモフモフに一度顔を埋めて、そう呟いて気持ちを強く持つ。
この強さもレイが与えてくれた大切な宝物。
自分を好きになるために、誰かに愛されるために私は一歩踏み出す時が来た……それだけよ。