スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
レイに触れられたら、閉じ込めたはずのまだ一緒に居たいって気持ちが溢れ出ちゃいそうで怖い。
最後ぐらいは笑っていたいからとびきりの笑顔を向けると、レイはその場で立ち尽くしたまま表情を変えないでいた。
「そう、か。帰る……か」
「はい。お世話になりました。この国の発展を、心より……願っております」
――ああ、駄目。
これ以上この人の傍にいたら、帰りたく無くなっちゃう……涙が、出てきちゃう……。
何か言おうと口を開いて、再び私に手を伸ばそうとしてくるレイを振り切って、深々とお辞儀をしてからレイを見ることなく部屋から出た。
部屋の前で待っていてくれたハイネと共に、足を動かす私にはもう迷いはない。
「ルゥ……本当に帰るの?」
いつの間にか魔法石から出てきていたシュマが、渋い顔で私の顔を覗く。
「うん。帰ろう。師匠には手紙、ちゃんと送ってくれたんでしょ?」
香り袋を販売すると決めたのと同じタイミングで、私は師匠宛に店に戻る旨を書き記した手紙をシュマに託していた。
ここまで送ってくれたセドリックに、もちろん迎えに来るようにともちゃんと書いた。