スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜



 どこかにまたふらりと行っているかもしれないけれど、師匠の腕にかかればそれくらい容易い事だろう。


「今日の夕方、セドリックが迎えに来てくれる予定よ。場所は翼の風車っていう宿屋に指定してあるから、そこで待ってましょ」

「ガウゥ……」

「ハイネも一緒に連れて帰るから大丈夫よ。ただその大きさだと馬車には乗れないだろうから、ちゃんと魔力を魔石に送って、体を小さくしてからよ?」


 大丈夫、大丈夫だと言うのに、二人は心底心配そうな顔で見つめてくる。

 店に帰ってしまえば、何も心配いらない。

 ここでの生活は大事な思い出として持って帰るつもりでいるんだから、そんな切なそうな顔をしないで欲しい。

 歩き慣れた城内のこの道を歩くのも、これで最後か……。


「ルフィア様……!」


 一生懸命私のことを探していたであろうユツィーが、私の元へと駆け寄ってくる。


「どういう事ですか?!今日でここを去るって……!」


 部屋に置いておいた手紙をどうやら読んでくれたらしい。

 必死に引き留めようと両肩を掴まれて、今にも泣きそうな顔で見つめられる。


「今、レイバート様にも話してきた所なの。手紙の通り、ここにいる理由はもう何もないから帰るだけだよ」

「嫌です!幸せを与えてくれて、生まれて初めて出来た友達と別れるなんてっ、私……私っ!!」


 こんなにも私の居場所を守ってくれていたユツィーと別れるのは、私だって辛い。





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