スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
母からの手紙
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ここに来た時に着て来たドレスや靴を詰め込んだ鞄だけを持って、指定した宿屋へと足を進めた。
香り袋の販売をしている時に古着や鞄と物々交換をしてもらったのは、案外いい作戦だったかもしれない。
軽い白シャツに動きやすさ重視のズボンなんて、傍から見たら街の人に溶け込んでること間違いなしだ。
おまけにフード着きのこのマントは目立つ髪を隠すことも出来るし、周囲には私だってことがバレていない。
城の部屋にあったドレスを着て帰ってしまったら目立つ上に、何かと未練が付き纏いそうな気がしていた……なんて考えてる時点で、正直名残惜しい気持ちが強い。
でもレイが想う本当の婚約者にも申し訳ないし、自分の多くを犠牲にしてきたレイにはちゃんと幸せになってほしい。
その想いを確かめれば、私は帰る選択を真っ先に選ぶ。
「今日の香り袋の稼いだお金は城を出る前に会ったユートさんに託せたし、やり残して来たことは何もないわね」
城の外を散歩してきます、なんてユートさんに嘘をついてきたのは心残りだけど仕方ない。
最終確認をしながら夕方まで時間を潰すために、街をブラブラ歩きながら最後の王都の観光をしていた。