スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
目立つハイネは魔力を魔石に注ぎ込んで、出会った当初ぐらいの小さな猫サイズに姿を変えて貰っているお陰で全くバレる気配はない。
本来の私に戻った気がして、落ち着く気持ちと少し寂しい気持ちが入り交じる。
「店に戻ったらまた嫌なこと囁かれるんだろうなあ……」
「だったら帰らなきゃいいのに」
「それとこれは別よ。それに……私の髪は幸せを導く色なんだから。そんな囁きで自分に嫌気なんかもう刺さないわよ」
「随分と逞しくなったねえ〜?誰のお陰だろうねえ〜?」
分かってて言うシュマを無視して歩き、王都の高台に建つ神殿へと辿り着き街を一望する。
この街の平和も、この国の平和も全部……ずっと続きますように。
傾きかけてきた太陽が照らすこの地を、大切に想い続ける彼の幸せも。
流れていく風に乗って漂う、この街の香りを肌で感じていると自然と言葉が零れた。
「本当に綺麗な街よね」
「うん。また遊びに来ようよ。今度はアルドネも連れて」
「師匠を連れてきたら、休む暇もないわよ」
「ガウ?」
「いい?ハイネ。師匠に嫌なことされたら、怒っていいからね?」
「きっとアルドネもハイネに暫くは夢中になるんだろうなあ〜」
悪戯げに笑うシュマにハイネは首を傾げる。
当たり前の日常に新しい仲間が加わるんだから、師匠も黙ってはいないだろう。