スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
そんな日常を想像しながら、迫ってくる予定時間に向けて私達は宿屋へと向かう。
見えてきた宿屋に迷わずやってこれたと胸を撫で下ろしていると、何か起こっているのかどこか騒がしい。
早足で宿屋に向かうと私よりも先にセドリックが到着していて、豪奢な馬車が道のど真ん中を占領していた。
まったく……こんな時くらい静かに帰りたいのに。
迎えをセドリックに任せたのが間違いだったかと頭を抱えそうになっていると、私の姿を見兼ねたセドリックが走ってやってくる。
「ルフィア!!あー会いたかったよ!」
「予定よりも早い到着だったのね。待たせちゃったかしら?」
「急な連絡だったから、何かあったのかと心配して早く来ちゃったよ。本当に……店へ帰るのかい?」
「その為に貴方を呼んだのよ?帰る足が私にはないんだから」
今更、やっぱり帰るのやめます!なんて誰に言えるって言うのよ。
セドリックには帰るから迎えに来て欲しいと伝えただけで、こうなった経緯は何も伝えてないから、この反応はあながち間違いではないけど……私の意志を揺らさないでほしい。
帰るったら帰るの。私のいるべき世界へ。
「レイバートからも連絡はあったから、てっきり嬉しい報告の方で呼ばるかと思っていたのに……」
「え?レイから?」
「っと。そうだ、君宛にアルドネさんから手紙を預かって来ているんだ」
半ば強引に話題を変えたセドリックは、胸ポケットから薬草の匂いがこびり付いた手紙を渡してきた。