スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
思わず眉間にしわを寄せていると、セドリックは一つ笑って私の顔に触れた。
「女性がそんな顔しちゃダメ。可愛い顔が台無しになる」
「はいはい」
彼の手を振り解きながら、軽くあしらうと今度は真剣な眼差しで見つめられる。
「なっ、なに?」
「いいかい、ルフィア。これから僕が言う事を守って欲しいんだ」
先程までのからかい半分で私に声を掛けてきていたセドリックの姿はなく、神妙な面立ちの彼に思わず背筋が反射的に伸びた。
「馬車を降りてからでいい。誰ふり構わず何かを聞かれたら『はい』と必ず答えて欲しい」
「え……?」
「大丈夫。僕が全力でエスコートするから、君は大舟に乗ったつもりでいて」
何をどうエスコートするつもりでいるのだろう。
しかも誰ふり構わず?『はい』とだけ答える?
田舎娘には想像もつかないマナーが、馬車を降りてしまったら降り掛かってくる……そういう事なんだろうか。
舞踏会なんて慣れないもの参加したくなかったのに。
彼の私への気遣いを無駄にしたくなくて、重たい腰を上げてここまでやって来たけれど、もう既に帰りたい。