スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
……なんでよ、師匠。
私、自分で歩むための道を自分で掴むつもりでいたのに。
――この恋に未練があることを、なんで貴方は分かってしまうの。
背中を押してくれる存在が、こんな遠くから応援してくれるなんて思ってもいなかった。
「師匠の馬鹿っ……」
目頭が熱くなって零れ落ちる涙を、シュマとセドリックが拭ってくれる。
誰かに愛されてみたいと願っていたけれど、私はこんなにも大切にされて愛されていた。
「シュマ……もしかして手紙書き換えて送ったわね?」
「書き換えてはいないよ。ただボクの想いも綴った手紙も添えただけ」
「セドリックも、ずっとレイと手紙でやり取りしてたの……?」
「そりゃあね。大事な友人のことを心配しない人はいないよ」
ああ……私ってなんて馬鹿でどれだけ未熟だったんだろう。
こんなにも私はたくさんの人に想われていたのに、どこか私は違う人間だからと線引きして距離を置いてしまっていたのだろう。
小さな囁き声や視線ばかりを気にして、その愛に気づきもしなかった。