スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
セドリックと瞬時に元の大きさに戻ったハイネがただならぬ空気に、私を庇うようにして前へと出る。
「カイルさん?!どうされたのですか?!」
「一刻も早く城へ戻って頂きたいのですっ!レイ様が……レイ様が……!!」
取り乱したカイルさんに安心させるように、私自ら彼の元へと近づいていく。
「落ち着いて下さい!レイが一体どうしたのですか?」
私の言葉に我に返ったカイルさんは、一先ず呼吸を整えるように肺いっぱいに空気を取り込んでいく。
乱れた呼吸をなんとか鎮めた彼は、私を真っ直ぐ見据えて出来事を簡潔に話す。
「申し訳ございません、取り乱しました。お伝えします――レイ様に毒が盛られ……意識を消失なさいました」
「ッ……!!」
いても立ってもいられなくなった私は、構えていたハイネの背に跨った。
「今すぐ戻りましょう!」
「僕の後に着いてきて下さい。近道はこちらです!」
「ハイネ、お願い!」
前を走るカイルさんを追いかけながら、乱れる心拍をどうにかしようと必死だった。
苦しいのはレイのはずなのに……!
締め付けられる胸に眉間にしわを寄せて、ただひたすらに願う。
どうか……どうか、無事でいて。
貴方がいないこの国なんて、こんなにキラキラと輝いてはくれないから。
貴方の傍でまだ一緒に笑っていたいから。
お願いだから、どうか遠くへ行かないで。
叩きつけてくる風に負けるものかと、目を凝らして近づいてくる城で待つレイを強く思うのだった。