スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
へんてこりんなスキル以外は持っていないけど、私の本能が行っちゃダメだと言っている気がする。
まあ、そんな本能なんて当てにならないんだけれど。
気分転換をするという目的を忘れずにいようと、ふと馬車の外の景色を見つめて、口が勝手に開いた。
「さて、着いたよ」
口が開いたのと同時に、セドリックが見えてきた建物と私を交互に見つめてくる。
「……セ、セドリック……」
どんどん馬車は建物へと近づいていき、だだっ広い庭園が辺り一面を取り囲んでいるのが遠くに見えた。
そして厳重そうな門をくぐり抜け、入ることを許可された馬車は、その建物の前へと到着すると動きを止めた。
扉が開かれ先に降りたセドリックが、そっと私に手を伸ばす。
今にも震えそうな手を必死に誤魔化しながら、彼の手を取ると馬車から降りる。
天へと真っ直ぐ伸びる立派な建物は、遠くから見たらきっと幻想的だのなんだとボヤいていただろう。
いざそれを目の前にした時、そんな言葉は一切出てこない。