スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
扉を開けると外で大人しく待っていたハイネが私に近づき喉を鳴らす。
「いい子ね。セドリックと一緒にレイを守ってあげて」
「ガウ」
「もしもの時は、レイとセドリックを乗せて逃げるのよ」
耳元でそう囁くと、ハイネの瞳が瞬いた。
大丈夫、この子がレイの傍にいてくれるなら心強い。
顎を一つ撫でてから、引き留めようとしてくるセドリックから逃げるように走り出す。
「シュマ、着いて来てる?!」
「ああ、もちろんさ!」
「何かあったら、今日は周りを気にせず魔力を使っていいからね!」
「それがルゥの馬鹿力だと勘違いされて、異性が寄り付かなくなった、なんて過去と同じ事になってもいいんだね?」
「お生憎。私の求める異性はもう決まってるもの。他の男にどう思われようが関係ないわ!」
「ははっ!よく言うよ!でも、そんなルゥも嫌いじゃないよ!」
シュマの楽しそうな笑い声に、何故か気持ちが奮い立たされた。
月明かりに照らされた道をなんの迷いもなく走る私が目指す先に、何が待ち受けているのか分からない。
だけど、レイのために私がやれることをするだけだ。
これまで沢山手を差し伸ばされて、優しく包んでくれた彼を失いたくない。
だったら……するべき事は決まっている。
「行こう!犯人の元へ!」
私の持つ力を振り絞るように、風を切りながら夜の城を飛び出したのだった。