スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜

裏切り者の正体




 夜も更けてきたからもあるのか、それまた緊張から来るものなのか……体の熱が持っていかれる。

 走って指定された場所へと辿り着き、上がる息を整えながら中々温まらない身体に喝を入れる。

 怯えるな、震えるな。

 この間にレイが遠くへ行ってしまったら……なんてこと考えるな。

 怪しげな月明かりが照らし出すのは、昼間訪れた神殿。

 神様を祀るこの神聖な場所で対峙するなんて、よっぽどな人格者の犯人らしい。


「ルゥッ、ここ何か様子がおかしい……」

「シュマ、貴方なんでそんなぐったりしてるの!」

「魔力が保っていられない。いざって時に出てこられる様に魔法石の中に一度入るよ……ごめん」

「分かったわ。無理しないで」


 プレートの中に入っていくシュマを見届けてから、辺りを一度見渡した。

 昼間見た景色とは違った、夜に包まれた街はガラスランプのように煌めいている。

 こんな素敵な国を作り上げてきたレイを傷つけるなんて、許しはしない。





< 202 / 237 >

この作品をシェア

pagetop