スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
「なんでこんな事するのよ――
ラジールくんッ!!!!」
騎士見習いの真っ直ぐな青年で、私のことを気遣ってくれる優しい彼だったはずなのに……。
目の前に立つ彼は闇に染まった悪魔のような目付きで、私を見下ろしてくる。
信頼していた人に裏切られたという絶望に飲まれないように、強くあろうと髪を触られていた手を振りほどくように払った。
「なんでって、そりゃあアイツから全てを奪いたいからに決まってるだろ」
淡々と言うラジールくんからは、起こった出来事の重さをまるで理解していない。
寧ろ彼はそれを強く望んでいる。
「犯人が俺って理解した所で、全てを教えてやるよ」
ラジールくんはおもむろに胸元からプレートを取り出すと、プレートに刻まれた刻印を魔力によって真っ赤な光で輝かせた。
「俺の名前はラジール・ゼンス・シェルバム。シェルバム王国の第二王子だ」
「第二、王子……」
「王位継承権を受け継ぐ兄が戦争を止めて平和条約を結ぶだの脳のない馬鹿げた話を始めたから、俺が代わりにこの国をぶっ壊そうと動いていたんだ。兄は俺の駒に消させて、俺が思う通りに動けるようになったから、まずは視察をしに来ていた……という訳だ」
少し前にシェルバム王国の第一王子が失踪したと、レイ達が話していたのを思い出す。
それもこれも目の前にいるラジールくん……いや、ラジール王子が全て仕込んだというわけだ。
「この間の戦いで凡その戦力を知って、魔法防御がない限り俺たちには勝利はないと見てな。レイバートを封じれば、後は攻め入るだけ……そう思っていたんだが」
いきなり腰に腕を回されて距離を詰められた私は、一瞬の出来事に身じろぐ事しか出来ない。
力強い腕に掴まれては逃げ出すことも不可能だった。