スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
足元に大きな魔法陣が描かれ、その赤い光が禍々しく揺れる。
「俺のスキルに抗えるとでも思うなよ」
解毒剤を手渡すことなく内ポケットに再び戻したラジール王子は、くいっと私の顎を持ち上げる。
「残念だったな。全て俺の手の内だ」
近づいてくるラジール王子の顔に、何も感じられない私はそのまま彼を受け入れようとする。
この状況に置かれて、最初はもう聞きたくないと思っていた声が私を引っぱたくように、力を全身に響かせた。
『スキル【魅了無効】を発動しました』
「っ……!でかしたわよ……!私の運命に抗うスキルッ!!」
抵抗するためにありったけの全身の力を使って、どうにか腰に回された腕を解こうと必死になる。
ラジール王子のスキルを何故か無効化してくれたお陰で、正気に戻った私を悔しそうな目で睨みつけられる。
「大人しくしていれば痛い目にあわんですんだのになあ!!」
「離してっ!」
「自分の行動に後悔するがいい!」
彼がどこからか取り出した短剣が、月明かりに反射して細く輝いた。
「ルゥッ……!!」
力を振り絞って魔法石から出てきたシュマが張ってくれた小さな結界によって、短剣が私に振りかざされることなく弾かれた。