スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
固まる私を他所に、セドリックは私の腕を自分の腕に掴ませるように動かすと、そのまま前へと踏み出した。
「遥々遠方から、“イザリオ城”にようこそおいで下さいました。セドリック・スイゼン様。会場までご案内致します」
「ああ。宜しく頼むよ」
動揺のあまり気づけなかった、燕尾服を着た男性が私達に声を掛けてきて、セドリックは男性にそのままついて行く。
もちろん、セドリックに行動を支配されている私も。
見渡す限りの煌びやかな空間に右も左も分からなくなりそうだというのに、セドリックは落ち着いた様子で私に歩調を合わせてくれている。
少し歩いてたどり着いた豪華絢爛な広間には、ここぞとばかりに華やかに着飾った貴族達が集っていた。
男性がごゆっくりと声を掛けて立ち去ると、ようやく我に返った私は、セドリックに主導権を握らせまいと壁際へと連れていく。
周囲の目を気にしながら、壁際の柱に身を潜めるようにしてセドリックに小声で吠える。
「どういう事?!城の舞踏会に参加するなんて、私聞いてないわよ?!」
こっちは焦りと怒りが入り交じって、どうしていいか分からないでいるというのに、セドリックは楽しそうに笑った。
「まあ、確かに説明はしてなかったけど、嘘は何一つとしてついてないよ」
何を慌ててるんだと宥めるセドリックに、この感情をぶつけたらいいのか。