スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
「――俺の女に手を出すとはいい度胸だな」
「グルルル……」
はっとその声のする方へと顔を上げれば、漆黒の艶やかな髪が風に靡いていた。
白い毛の持ち主の背から降り立った、勇ましいその背中に一粒の涙が溢れた。
「レイ……」
「後は頼んだよ、王様」
力なく光の粒を纏わせた身体のまま、シュマは魔法石の中へと帰っていく。
彼の姿を見ることは出来ないはずなのに、レイはそれを見届けるかのように魔法石を横目で見つめた。
「遅くなってすまない。ルフィア、十数える間に終わらせる。話はその後にのんびりしよう」
真っ直ぐで綺麗な瞳に包み込まれるような気持ちに、涙を強く拭った。
涙なんかもう必要ない。
この決着は、まだ終わってないんだから。
「なんでてめぇがここにいんだよ!瀕死の状態だっただろうが!それにっ俺のスキルによって、ここにある魔力は全て俺に吸収されるはずじゃッ……!」
「ずべこべと五月蝿い奴だ……こんな阿呆に付き合ってられん」
予想外の出来事に、これまで立ててきた計画が全て台無しになったラジール王子は、冷静さを失い取り乱す。