スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜



 ため息混じりにイラつきを零すレイは、自分の足元に魔法陣を一瞬で出現させたかと思えば、ラジール王子目掛けて腕を突き出した。


「俺を怒らせた事を後悔するがいい」

「邪魔をするなあァアアッ!!!!」

「――失せろ」


 怒りに満ちたその声には誰にも敵わない程の、強い力を感じた。

 轟音と共に一本の矢のように形を変えた雷がラジール王子に見事直撃し、成す術もなく一瞬にして気を失った。

 この国の最強を誇るレイの魔法を生身で受け止めたのだから無理もない。

 十数えろと言われていたけれど数える暇もなく、全てが何もなかったかのように黒い土煙が周辺で渦を巻いては揺れる。

 一瞬のこの出来事に呆気に取られることしかできない私は、とりあえず身を潜めた。

 立つことを維持できなくなり、うつ伏せの状態で地面に倒れたラジール王子に見向きもせずに、レイは私の元へと大股で詰めてくる。

 だけど、ハイネが大きく尻尾を振ってレイの行く手を阻む。


「ハイネ!そこをどけ!」

「ガーウ」

「レ、レイ……なんで?!貴方っ、毒は?!」

「あんな効果の薄い毒に俺が侵されるとでも思っているのか?確かに今までにない耐性のない毒だったせいで、分解に時間は掛かったが体には何ら影響もない」

「嘘……でしょ?」


 あれだけ苦しそうにしていたっていうのに、目の前にいるレイはちっともそんな素振りはない。




< 211 / 237 >

この作品をシェア

pagetop