スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
確かに間違った情報は与えられていない。
でも、違うのよ……違うのよ!!
「そうだけど、そうなんだけどっ!なんでこんな場所に連れてきたの?!」
セドリックみたいな屋敷で開かれる、小さな舞踏会を予想していたというのに、右斜め上すぎる結果に動揺を隠せない。
「ん?気分転換のためだよ。あと、馬車の中で約束したことちゃんと覚えてる?『はい』だけだからね。出来たらご褒美あげちゃおうかなあ〜?」
子供を躾ける親みたいに言うセドリックに、もう何も反応出来ない。
こんな大勢の目がある中で、変に目立つ立場にいる私が、仮に何かをやらかしたら。
私だけでなく、セドリックにもそれは影響を及ぼしてしまう。
それだけは避けないといけない、絶対に。
だからと言ってこんな場所での立ち振る舞いなんて、薬屋で働いてる私には知り得ない。
鏡を見なくとも青ざめているであろう顔を、セドリックに向けると、頭をぽんぽんと撫でられる。
「こういう場も慣れておくと、今後役立つことが出てくるはずさ」
いや、絶対そんな場面あるわけない。
魔女と共に生活している私が、今後舞踏会に行くことなんてこれが人生最初で最後なんだから。
「ルフィア、返事は?」
「……はい」
「うん、素直でよろしい。……後は、彼がここに来てくれれば後々順調に行くんだけど――」
セドリックは私の肩を支えながら、辺りを見渡す。
その時、後ろから何やら気配というか、胸がざわめく感じがして、ふと首だけ動かして後方を確認した。