スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜



 視界に映りこんだ光景に、思わず息を呑んだ。


 全身を真っ黒なローブで身を隠し、顔はフードを被っているせいでよく見えない。


 その人物から放たれる威圧感に、身が縮こまり身体は動かない。


 よく分からない人物をセドリックに知らせようとするけれど、その前に彼が私から離れていった。



「セドリック様!こちらにいらしたんですね!」


「探しましたのよ。貴方様に会うためだけに、本日は参りましたのよ?」


「ずっとずっとお会いしたかったです!」


「今日もとても素敵ですぅ!私のこのドレス、似合ってますぅ?」



 群がる香水の香りがやけに強い女性陣が、強引にもセドリックを私から引き剥がしたと理解するまでに、暫くの時間を要した。


 大舟に乗ったつもりでいて、そう言ったのに。


 急に一人になってしまったという不安、そして後ろにいる謎の人物への恐怖。


 どうしたらいいのか分からずに、バレないように謎の人物を盗み見た。


 明らかに、怪しいよね?


 私もだけど、場違いにも程があるよね?


 なのに誰も反応せずに、この場にいる。


 お城の中で、怪しい人物がいても兵士とか動いたりしないわけ?


 分からない……この状況で私はどう動くべきなのか。



「あいつの連れか?」



 唐突に声を掛けられ、身体がピクリと反応してしまう。






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