スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
雰囲気とは全く違った凛とした爽やかな声から、怪しい謎の人物は男であるということが判明した。
あいつ……今までここにいた人物と言えば、私とセドリック以外にいない。
その答えに素直にこくりと小さく頷くと、ローブの男は一気に私との距離を縮めてきた。
「じゃあ……あんたが噂の眼の持ち主か。俺の魔力感知してる時点で薄々そうだろうとは思ってはいたが」
何?何を言っているの?
眼の持ち主?魔力感知?
ダメだ、訳が分からない。
困惑する私を他所に、会場内にしっとりとしたワルツを演奏する楽器の音色が響く。
音楽に合わせるようにそっと近づいてきた男の顔が、一瞬だけ見えた。
たった一瞬だけだというのに、順々に踊り出す貴族達の足音よりも、私の心拍数の方が遥かに速くなる。
「来い」
いきなり手を取られたかと思えば、半ば強引に彼に引っ張られる形で、会場の前の方へと進んでいく。
時折人にぶつかりそうになるけれど、ローブの男は私がぶつからないよう守るように前に進んでくれた。
強引だというのに、掴まれる手は割れ物を壊さぬようにと優しく触れられるのが、妙に擽ったい。