スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
痛みを覚悟したけれど、待っていたのは……ふかふかとした身体を包み込む柔らかい感覚。
痛みがやって来なかったことに安心しつつも、豪快に転ぶという、不格好な姿を見せてしまったと、恥じらいながらもう一度男性を見た。
「……へっ?!」
この状況に陥った人なら、きっと誰しもがへんてこりんな裏返った声を上げてしまうに決まってる。
声を上げない方が、どうかしてるって言ってもいい。
いきなり着ていた服を投げ捨てるようにして脱ぎ、顕になった程度のいい筋肉で引き締まった上半身を見てしまったら、声を出さずにはいられない。
普段見慣れない、というか街の筋肉自慢のおじちゃん達ぐらいのしか見たことない私には、歳の近い男の人の上裸なんて、免疫があるわけない。
恥ずかしさに顔が熱くなるのが分かり、思わず目を逸らして周囲を見渡すけれど、私の顔は急に青ざめた。
滑らかなシーツの皺が海の波ようにうねり、寝心地の良さそうな上質な枕が二つ。
私が転んだ際に助けてくれたこの場所は……寝台だ。
待って、待って待って、待っってっ……!!
全ての状況を把握してしまった私は、うるさく鳴り響く心臓をどうにかするので必死だ。
私、もしかして今日、大人の階段を……上る、の?
いや、何がどうしてこうなった?舞踏会は?
混乱で頭がどうにかなりそうだというのに、心臓はうるさく鳴り響いて、拍車をかけてくる。