スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
Ⅰ*
薬屋【精霊の匙】の魔女と私
*
「はあぁ〜……」
雲一つない綺麗な青空が広がる、気持ちがいい天気のはずなのに、私の口から零れるのは重たい重たいため息ばかり。
栄養満点の土のお陰で青々と立派に育つ薬草達は、そんな私にお構いなく与えられた水を美味しそうに飲んでいる。
悩みも何もないなんて、本当に羨ましい。
再び零れるため息に体の力が抜けそうになるけれど、そうはさせないと声が掛かった。
「ルフィア!畑仕事が終わったら、店の方手伝って!」
家の中からそう声が聞こえて、手に持っていたバケツの中に残っていた水を一気に周りに撒くと、楽しそうに笑う少年の声が聞こえてきた。
「ルゥ!今のもう一回やってよ!」
人っ子一人いないというのにその声が聞こえるけれど、私は驚くこともなく首を横に振る。
「悪いけど、今忙しいの」
吐き捨てるように言って、重たい足を動かしながら家の中に入り、身支度を整えてから店へと続く扉を開けた。